冷凍の桃スティックや桃、紅茶が置いてあるテーブルの上の様子

酵素反応とは?仕組みとポイントをわかりやすく解説  

酵素反応とは、酵素が特定の基質に結びついて化学変化を起こす仕組みのことで、製菓の現場ではタンパク質分解酵素や転化酵素の働きとして身近に登場します。生のパイナップルでゼリーが固まらない、フォンダンの中身が時間とともに柔らかくなるといった現象の裏側には、この酵素反応があります。この記事では酵素反応が起こる仕組みと、現場で押さえておきたい対応のポイントを解説します。

酵素反応とは

酵素反応とは、酵素が特定の物質(基質)に結合し、別の物質へと変化させる化学反応です。
酵素は生物がつくるたんぱく質の一種で、特定の基質としか結びつかない性質(基質特異性)を持っています。よく「鍵と鍵穴」の関係にたとえられ、酵素という鍵穴に合う基質だけが分解や合成などの反応を起こします。製菓の現場では、常温での仕込みから高温の加熱調理まで幅広い温度帯を扱うため、意図せず酵素反応が進んでしまう場面と、逆に酵素反応をあえて利用する場面の両方が存在します。

酵素反応の仕組みと防ぎ方

酵素反応の速さを左右する条件

酵素反応の速さは、温度・pH・基質の濃度という3つの条件に左右されます。多くの酵素は30〜40℃前後でもっとも活発に働き、冷蔵庫のような低温では反応がゆるやかになります。至適pHも酵素ごとに決まっており、範囲を外れると効率が大きく落ちます。仕込みの温度帯や保存温度を意識するだけでも、酵素反応の進み方はある程度コントロールできます。

加熱で酵素を失活させる

酵素の本体はたんぱく質のため、高温にさらすと立体構造が崩れて働きを失います。これを失活と呼びます。多くの酵素は60〜70℃程度から失活が始まり、80℃以上ではほぼ働かなくなるとされています。生の果物に含まれる酵素を無効化したいときは、加熱してから使う、または加熱殺菌済みの缶詰・加工品に置き換えるのが基本的な対処法です。

酵素反応が起こる場面と現場対応

生の果物がゼラチンを固めない

生のパイナップル・キウイ・パパイヤ・イチジク・メロンなどには、ゼラチンの主成分であるコラーゲン由来のたんぱく質を分解する酵素(ブロメライン、アクチニジンなど)が含まれています。これらの果物を生のままゼリーに加えると、たんぱく質分解酵素がゼラチンを分解し続けてしまい、いつまでも固まらない状態になります。現場対応としては、果物を一度加熱してから使う、酵素が失活済みの缶詰フルーツに置き換える、寒天など酵素の影響を受けにくい凝固剤を使うといった方法があります。

フォンダンをやわらかくする転化酵素

逆に、酵素反応をあえて利用する例もあります。ボンボンショコラの中身にフォンダンを使う場合、転化酵素のインベルターゼをごく少量加えてチョコレートでコーティングすると、貯蔵している間に酵素がショ糖を転化糖へと分解し、数日から1週間ほどでなめらかなクリーム状に変化します。仕込み直後は硬めでも、時間が経つほど口どけがよくなるのはこの酵素反応が理由です。

パン生地をふくらませるでんぷん分解酵素

小麦粉にはアミラーゼという酵素が含まれており、生地の中のでんぷんを麦芽糖などの糖に分解します。イーストはこの糖を栄養にしてアルコール発酵を進めるため、アミラーゼの働きが発酵のスピードや生地の伸展性に影響します。また、分解によって生まれる還元糖は焼成時の焼き色にも関わるため、モルトパウダーなどでアミラーゼの働きを補うレシピもあります。

カットフルーツの変色(酵素的褐変)

りんごやバナナの切り口が茶色くなるのも酵素反応の一種で、酵素的褐変と呼ばれます。果肉の細胞が壊れると、ポリフェノールとポリフェノールオキシダーゼという酸化酵素が接触し、酸素と反応して褐色の色素をつくります。デコレーションで生の果物を扱う際は、レモン汁や塩水にくぐらせて酸化酵素の働きを抑えることで、切り口の変色を遅らせることができます。

酵素反応に関するよくある質問

生のパイナップルでゼリーが固まらないのはなぜですか?

生のパイナップルにはブロメラインというたんぱく質分解酵素が含まれており、ゼラチンのたんぱく質を分解してしまうためです。缶詰のパイナップルは加熱処理で酵素が失活しているため、同じ量を使ってもゼリーは問題なく固まります。

酵素反応を防ぐにはどうすればよいですか?

酵素はたんぱく質でできているため、加熱すると立体構造が壊れて働きを失います(失活)。目安として60〜70℃前後から失活が始まり、80℃以上でほぼ止まるとされているため、対象の食材を事前に加熱してから使うのが基本的な対処法です。

酵素反応を製菓にあえて利用することはありますか?

あります。代表例はボンボンショコラのフォンダンで、転化酵素インベルターゼをごく少量加えておくと、貯蔵中にショ糖が分解されてクリーム状の食感に変化します。意図的に酵素反応を進行させる技術として使われています。

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執筆者 森岡千明|株式会社スナックミー パティシエ・商品開発

大阪のデザート専門店や東京の三ツ星レストラン、ケーキ店などでパティシエとして経験を積んだのち、株式会社スナックミーへ入社。商品開発職を経て、現在はカスタマーサポートを担当。商品開発で培った経験をもとに、お客さま一人ひとりの声にていねいに向き合いながら、福利厚生向け置き菓子の魅力や「おやつ時間」の楽しみ方を伝えるコンテンツ制作にも携わる。好きなおやつは『さつまいもチップス』と『サクほろ 濃厚ココアクッキー』。

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