
pH(ピーエイチ、酸度)とは、溶液がどれくらい酸性かアルカリ性かを表す指数です。0〜14の数値で示され、7が中性、数値が小さいほど酸性、大きいほどアルカリ性であることを意味します。お菓子作りの現場では、ジャムのゲル化・ココアの発色・メレンゲの泡立ちなど、多くの工程がpHの影響を受けます。この記事では、pHの仕組みと、現場でどのように活用・管理されているかをわかりやすく解説します。
pHとは、溶液中の水素イオン濃度をもとに酸性・アルカリ性の度合いを数値化した指数です。
pH【英:potential of Hydrogenの略という説があります】は、1909年にデンマークの化学者セーレン・ソーレンセンが提唱した指数で、水素イオン濃度指数とも呼ばれます。数値は0から14までの対数目盛りで表され、7が中性、7より小さいほど酸性が強く、7より大きいほどアルカリ性が強いことを示します。対数目盛りのため、pHが1違うと水素イオン濃度は10倍変わります。
具体的な数値のイメージとして、身近な食品のpHの目安は以下の通りです(配合や個体差により多少前後します)。
食品・液体 | pHの目安 |
|---|---|
レモン汁 | 2程度 |
酢 | 2.5〜3程度 |
ヨーグルト | 4程度 |
牛乳 | 6.5〜6.8程度 |
卵白 | 8〜9程度 |
重曹水 | 8〜9程度 |
ジャムに含まれるペクチンは、pHと糖度の条件がそろうことでゲル状に固まります。一般的な高メトキシルペクチンは、糖度55〜80%かつpH2.7〜3.5程度の酸性域でなければ、水素結合によるゲル形成が起こりません。酸味が足りない果物を使う場合は、クエン酸やレモン汁を加えてpHを調整し、糖度が上がりきった段階でpHが2.8〜3.2程度になるよう仕上げるのが一般的です。低メトキシルペクチンはカルシウムなどのミネラルがあればpH3.2〜6.8の広い範囲でゲル化するため、低糖度ジャムにも使われます。
カカオ豆を焙煎してすりつぶしただけのナチュラルココアはpH5〜6程度の弱酸性で、赤みがかった明るい色と強い酸味が特徴です。これに炭酸カリウムなどのアルカリ剤を加えて中和する工程が「アルカリ処理(ダッチプロセス)」で、処理後のダッチココアはpH7〜8程度まで上がり、色は濃い茶色から黒に近づき、酸味も抑えられます。焼き菓子の色味や風味の狙いに応じて、ナチュラルとダッチのどちらを使うかを使い分けます。
卵白はもともとpH8〜9程度のアルカリ性で、泡立てるとオボアルブミンなどのたんぱく質が変性して膜を作り、気泡を包み込みます。ここに酒石酸を主成分とするクリームオブタータを少量加えると、卵白のアルカリ性が弱まりpHがたんぱく質の等電点に近づくため、気泡の膜がより安定し、しっかりとしたメレンゲに仕上がります。レモン汁でも同様の効果が得られます。
重曹(炭酸水素ナトリウム)はアルカリ性のため、生地に加えると生地全体のpHが上がります。アルカリ性に傾いた生地は加熱時のメイラード反応が進みやすくなり、香ばしい焼き色がつきやすくなる一方、小麦粉由来のフラボノイド色素と反応して生地が黄みがかることがあります。ベーキングパウダーは重曹に酸性剤を組み合わせることで、ガス発生を助けつつ生地がアルカリ性に傾きすぎるのを抑え、苦みや変色を防ぐ設計になっています。
現場でpHを確認する場面は、ジャムの仕上がり判断、発酵種の管理、洗浄・殺菌工程の確認など多岐にわたります。簡易的にはpH試験紙を溶液に浸して色の変化を見る方法が使われ、より細かい数値が必要な場合や緩衝力の弱い溶液を扱う場合はpHメーターが使われます。原材料そのもののおおよそのpHは、仕入れ先の規格書(スペックシート)やpH計メーカーが公開している早見表である程度把握できますが、配合や産地によって差があるため、仕込みの現場ではpH試験紙・pHメーターでの実測に基づいて判断するのが確実です。ジャム製造では、糖度計で糖度を確認しながら仕上げ、糖度が目標に達した段階でクエン酸を少量ずつ加えてpHを追い込むのが一般的な流れです。
よくあるつまずきは、酸を入れすぎてしまうケースです。ペクチンのゲル化に適したpH域を超えて酸性が強くなりすぎると、ゲルの網目構造がかえって崩れやすくなり、離水(シネレシス)を起こして水っぽい仕上がりになることがあります。酸は少量ずつ加えて都度確認するのが安全です。また、pHは温度によっても数値が変わるため、測定は毎回同じ温度帯で行うと、日々の仕込みでの数値のブレを防ぎやすくなります。
pHは水素イオン指数を意味し、英語のpotential of Hydrogen(水素の潜在能力)の略とする説が広く知られていますが、由来には諸説あります。1909年にデンマークの化学者ソーレンセンが提唱した指数で、水素イオン濃度をもとに酸性・アルカリ性の度合いを数値化したものです。
多くの場合、クエン酸やレモン汁を加えてpHを下げ(酸性側へ)、重曹やアルカリ剤を加えてpHを上げます。ジャムのゲル化やメレンゲの安定など、目的の工程に応じて少量ずつ加えながらpH試験紙やpHメーターで数値を確認し、狙いの範囲に近づけていくのが基本の流れです。
おおまかな酸性・アルカリ性の傾向を素早く確認したい場合はpH試験紙で十分です。一方、ジャムの仕上げなど狙いのpH域が狭く、緩衝力の弱い溶液を扱う場合は、より正確な数値が読み取れるpHメーターの使用が向いています。

執筆者 森岡千明|株式会社スナックミー パティシエ・商品開発
大阪のデザート専門店や東京の三ツ星レストラン、ケーキ店などでパティシエとして経験を積んだのち、株式会社スナックミーへ入社。商品開発職を経て、現在はカスタマーサポートを担当。商品開発で培った経験をもとに、お客さま一人ひとりの声にていねいに向き合いながら、福利厚生向け置き菓子の魅力や「おやつ時間」の楽しみ方を伝えるコンテンツ制作にも携わる。好きなおやつは『さつまいもチップス』と『サクほろ 濃厚ココアクッキー』。
まずはエントリー!
・都内で求職中のパティシエの方へ
・店舗アルバイトや製造パートの方へ
・物流の現場に興味のある方へ