
でんぷんの老化とは、加熱によって糊化したでんぷんが、時間の経過とともに元の構造に近づき、硬くパサついた食感に変わる現象です。焼き立てのパンが翌日には硬くなる、炊いたご飯が冷めると硬くなるといった変化の正体で、製菓・製パンの現場では品質保持のうえで避けて通れないテーマです。この記事では、老化が起こる仕組みと防ぐポイント、現場での対応、よくある質問までをわかりやすく解説します。
でんぷんの老化とは、加熱で糊化したでんぷんが冷めるにつれて元の構造に戻り、硬くパサつく現象のことです。
でんぷんは水とともに加熱すると水を吸って膨らみ、糊状に変化します。これが「糊化」です。老化はその逆にあたる現象で、糊化でんぷんが冷えていく過程で、内部の水分を外へ押し出しながら分子同士が再び結びつき、硬く変化していきます。英語では「retrogradation」と呼ばれ、糊化と対になる概念として扱われます。
でんぷんは、直鎖状の分子であるアミロースと、枝分かれ構造を持つアミロペクチンで構成されています。糊化した状態では、この2つが水を抱え込んでゲル状になっていますが、温度が下がるとアミロース同士が結びつきやすく、抱えていた水を押し出しながら再結晶化します。この現象が老化です。老化は水分含量30〜60%、温度0〜4℃付近でもっとも早く進むとされ、なかでも水が凍る直前の2〜4℃帯が最速の条件です。
老化による食感の変化は、商品によって現れ方が異なります。
食パン:クラムの水分がクラスト側へ移行しながら再結晶化が進み、クラムは硬くしまってパサつく一方、クラストは焼き立てのパリッとした食感を失ってしんなりする
ご飯・すし・おにぎり:米粒のでんぷんが老化して硬化し、粒どうしの一体感が失われてボソついた食感に変わる
サンドイッチ:具材から出る水分が影響してパン側の老化が進みやすく、パンが締まって具材との一体感が薄れる
マフィン・ケーキ類:生地中のでんぷんの老化によってしっとり感が失われ、口当たりが重くもたついた食感に変わる
老化を抑えるには、老化に必要な「液体の水」の条件を崩すことがポイントです。
急速冷凍して水分を凍結させ、液相をなくす
80℃以上で乾燥させ、水分含量を10〜15%以下にする
砂糖などの保水性のある材料を加え、水分を保持する
アミラーゼ等の酵素ででんぷん分子を切断し、再結晶化を抑える
こうした変化は、保存条件によって進み方が大きく変わります。現場で誤解されやすいのが保存方法です。冷蔵庫(2〜4℃前後)は老化がもっとも早く進む温度帯にあたるため、「冷蔵すれば長持ちする」と考えて保存すると、かえって老化を早めてしまいます。老化を抑えたい場合は、常温保存か、冷めた状態で早めに急速冷凍するほうが有効です。また、もち米はアミロースの含有量が少ないため、うるち米に比べて老化しにくいという性質があり、和菓子でもち生地が使われる理由のひとつになっています。硬くなってしまった場合も、電子レンジ加熱や蒸し直しで水分を与えて再加熱すると、でんぷんが再び糊化に近い状態に戻り、ある程度食感が回復します。
急速に冷凍すると水分が凍結して液体の水がなくなり、老化に必要な条件が崩れるためです。老化がもっとも進みやすい2〜4℃の温度帯を素早く通過させることも、冷凍がご飯の老化防止に有効とされる理由です。
冷蔵庫内の2〜4℃前後は、でんぷんの老化がもっとも早く進む温度帯にあたるためです。常温や冷凍での保存に比べて、冷蔵保存はかえって老化を早め、パンが硬くなりやすくなります。
糊化は、でんぷんが加熱によって水を吸い膨らみ、糊状に変化する現象です。老化はその逆で、糊化したでんぷんが冷える過程で水分を押し出しながら再結晶化し、硬くなる現象を指します。

執筆者 森岡千明|株式会社スナックミー パティシエ・商品開発
大阪のデザート専門店や東京の三ツ星レストラン、ケーキ店などでパティシエとして経験を積んだのち、株式会社スナックミーへ入社。商品開発職を経て、現在はカスタマーサポートを担当。商品開発で培った経験をもとに、お客さま一人ひとりの声にていねいに向き合いながら、福利厚生向け置き菓子の魅力や「おやつ時間」の楽しみ方を伝えるコンテンツ制作にも携わる。好きなおやつは『さつまいもチップス』と『サクほろ 濃厚ココアクッキー』。
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