木製の器の上に数種類のチョコレートが置いてある様子

トレーサビリティとは?菓子製造での意味と実務ポイントをわかりやすく解説 

トレーサビリティとは、原材料や製品がいつ、どこで、誰によって作られ、どのように流通したかを追跡できる状態のことです。菓子製造の現場では、原料の仕入れから製造・出荷までをロット単位で記録・照合する仕組みとして扱われます。この記事では、意味の背景から現場での運用のポイント、よくある疑問までをわかりやすく解説します。

トレーサビリティとは

トレーサビリティとは、原材料や製品がいつ・どこで・どのように作られ流通したかを追跡できる状態のことです。
トレーサビリティ【英:traceability】は、「trace(跡をたどる)」と「ability(能力)」を組み合わせた造語で、日本語では追跡可能性とも訳されます。1990年代末以降、遺伝子組み換え作物や有機農産物への関心の高まりに加え、BSE(牛海綿状脳症)問題や産地偽装といった食の安全を揺るがす出来事が相次いだことをきっかけに、食品分野での注目度が急速に高まりました。菓子製造の現場でも、原材料の産地・仕入れ先から製品の出荷先までを記録・照合できる仕組みとして位置づけられています。

トレーサビリティの実務上の要点

内部トレーサビリティと外部トレーサビリティ

内部トレーサビリティは、自社工場内で原材料の受け入れから製造・出荷までを追跡できる状態を指します。一方、外部トレーサビリティは、原料の仕入れ先や委託製造先(OEM)、卸・小売までを含めたサプライチェーン全体で追跡できる状態です。菓子メーカーは自社工場内の内部トレーサビリティを土台にしつつ、OEM先や原料サプライヤーとロット情報をやり取りすることで、外部トレーサビリティを成立させています。

ロット単位での紐づけが基本

トレーサビリティの実務は、ロット(同一条件で製造・出荷された製品群の単位)を軸に組み立てられます。原料の入庫ロットと製造ロット、出荷ロットを対応づけて記録することで、あるロットに問題が見つかった際に影響範囲の工程・製品だけを特定し、必要最小限の範囲で対応できるようになります。

個別法による義務づけ

日本には食品全般を対象とした包括的なトレーサビリティ法は存在しませんが、牛肉を対象とした「牛トレーサビリティ法」と、米・米加工品を対象とした「米トレーサビリティ法」は法制化されています。菓子製造で米粉など対象原料を扱う場合、これらの個別法の対象かどうかを仕入れ先に確認しておくことも実務上のポイントです。

現場での運用や役割

菓子製造の現場では、原料の検収時にロット番号・産地・仕入れ日を記録し、そのロットがどの製造日・どの製品に使われたかを製造記録と紐づけて保管します。特にトレーサビリティが意識されやすい原材料には、次のようなものがあります。

  • 卵・乳製品・小麦粉などの特定原材料(アレルゲン表示義務があり、コンタミネーション事故が起きた際の影響が大きい)

  • カカオ・チョコレート(産地やサステナビリティ認証への関心が高く、原料表に産地情報を求められることが多い)

  • ナッツ類(アレルゲンとしての管理に加え、混入防止のためのロット分離が必要)

  • 輸入フルーツ・洋酒(原産国表示が必要で、通関書類とロットの突合が発生する)

OEM先に製造を委託している場合は、委託先から原材料証明書やロット記録の提出を求め、自社の記録と照合できる状態にしておくのが一般的な運用です。

現場でつまずきやすいのは、ロットを分割して使用したときの管理です。1つの入庫ロットを複数の製造日にまたがって使う場合、現品票の張り替えや在庫システム上でのロット分割処理が漏れると、後から遡ったときに追跡が途切れてしまいます。原料ロットと製品ロットの対応を手作業の台帳だけで管理していると、棚卸のたびに突合作業が膨大になりがちです。回収(リコール)が必要になった場面を想定し、平常時から「このロット番号からどの製品・どの出荷分までたどれるか」をすぐに答えられる状態を保っておくことが、実務上のコツです。

トレーサビリティに関するよくある質問

トレーサビリティとロット管理の違いは何ですか?

ロット管理は原材料や製品を一定の単位(ロット)ごとに区分して記録する手法そのものを指します。トレーサビリティは、そのロット管理を土台に原材料の仕入れから製品の出荷までを追跡できる「状態」を表す、より広い概念です。

内部トレーサビリティと外部トレーサビリティは何が違いますか?

内部トレーサビリティは自社工場内での原材料受け入れから出荷までを追跡できる状態、外部トレーサビリティは原料サプライヤーやOEM先、卸・小売まで含めたサプライチェーン全体で追跡できる状態を指します。

菓子製造にトレーサビリティの法的義務はありますか?

食品全般を対象とした包括的な法律はありませんが、米粉など米トレーサビリティ法の対象原料を使う場合は記録・伝達義務が生じます。それ以外は任意対応が基本ですが、取引先や小売から証跡の提出を求められることがあります。

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執筆者 森岡千明|株式会社スナックミー パティシエ・商品開発

大阪のデザート専門店や東京の三ツ星レストラン、ケーキ店などでパティシエとして経験を積んだのち、株式会社スナックミーへ入社。商品開発職を経て、現在はカスタマーサポートを担当。商品開発で培った経験をもとに、お客さま一人ひとりの声にていねいに向き合いながら、福利厚生向け置き菓子の魅力や「おやつ時間」の楽しみ方を伝えるコンテンツ制作にも携わる。好きなおやつは『さつまいもチップス』と『サクほろ 濃厚ココアクッキー』。

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